フジテレビの労働組合加入者が急増している。中居正広さんの女性トラブルを発端とした一連の問題を受け、社員たちの間で労働組合への関心が高まっているからです。しかし、驚くべきことは、これまでフジテレビの労働組合加入率は非常に低かったことの露呈です。なぜフジテレビの労働組合加入率は急増したがこれほどまでに低かったのか?その背景には、創業家の意向や出世に関わる問題があるのだろうか?本記事では、フジテレビの労働組合加入率の低さの理由と、最近の急増の背景について徹底調査します。
フジテレビ労働組合加入者急増の理由とは?
労働組合加入率の低さの背景
先週時点でフジテレビの組合員の加入数は80人でしたが、23日の時点で500人を超える、という急増ぶりに世間も驚きを隠せず注目が集まっていますが、そもそも「80人」しか加入していなかったというフジテレビの現状に衝撃を受けている人も多そうです。
ぞのフジテレビ労働組合は23日、引退を発表したタレント中居正広さんの女性トラブルを巡り、フジテレビ社員の関与が報じられている問題で港浩一社長宛てに意見書を提出した、とのことですがフジテレビの労働組合加入率の低さの背景は根本的に何なのでしょう。
創業家の影響
フジテレビの労働組合加入率が低かった理由の一つとして、創業家である鹿内家の影響が挙げられます。鹿内家は組合運動に否定的であり、その影響が長年にわたって続いていたとされています。
【<読まれています>鹿内信隆 #フジテレビ 社長(1967年8月号)】
— 月刊「財界さっぽろ」編集部 (@zaisatsu) January 23, 2025
フジサンケイグループの創設で中心的な役割を果たしたのが鹿内信隆氏。
同氏は道産子で、由仁町出身。岩見沢中学、早稲田大学卒。取材で故郷への思いを、吐露していた。#財さつJPhttps://t.co/hwZOUpD05i
に鹿内信隆氏の主要な出来事を時系列でまとめました。
年 | 出来事 |
---|---|
1954年 | ニッポン放送の設立に関わる |
1957年 | 文化放送の社長に就任 |
1963年 | フジテレビの社長に就任 |
このように、鹿内信隆氏は戦後の混乱期において、放送業界の発展に大きく貢献しています。フジテレビの設立と成長においても重要な役割を果たしました。
鹿内信隆氏のリーダーシップのもと、フジテレビは急速に成長し、フジサンケイグループの一翼を担う存在となりました。しかし、鹿内家は労働組合運動に対して否定的な立場を取っており、その影響が長年にわたって続いていたとされています。
このような背景が、フジテレビの労働組合加入率の低さに影響を与えたと考えられます。
鹿内家に変わってトップに就いた日枝さんは昔、組合活動に熱心だったそうです。…なのになんで少ない??
フジ女子アナ“上納接待”疑惑「諸悪の根源」は天皇こと日枝久氏か…ホリエモンは「出てこい!」と訴え、OBも「膿を全部出すべき」(日刊ゲンダイDIGITAL)#Yahooニュースhttps://t.co/OE1vNjIoUz
— りら くまお (@Homura_DRZ) January 24, 2025
こういう古い人間が残り続けるから後進が育たないし、変わらない。日本の本当に悪い所だと思う
年 | 経歴 |
1961年3月 | 早稲田大学卒業 |
1961年4月 | フジテレビ入社/入社後、労働組合結成に奔走。その後組合の書記長に就任 |
1982年5月 | 編成局長/42歳 |
1988年 | 創業者一族の鹿内信隆氏の長男・春雄氏急死にて社長就任 |
2001年 | 会長に就任 |
2017年 | 相談役に退くが影響力は変わらず |
フジテレビの社風
社員が労働環境に対して大きな不満を抱いていなかったため、労働組合に加入する必要性や危機感を感じていなかった可能性があります。社員が労働環境に対して大きな不満を抱いていなかったため、労働組合に加入する必要性を感じていなかった、ということになります。
『国民的なおもしろさ。』楽しくなければテレビじゃない…1982年秋のフジテレビ pic.twitter.com/M8D6v1viL4
— Hopegenki (@Hopegenki1) October 14, 2024
その典型的な例がフジテレビ港浩一社長の定例会見が批判にさらされ、スポンサー離れが始まった最中の「めざまし8」でこの状況を谷原章介さんに尋ねられた勤務13年と自己紹介しながら心情を吐露したフジテレビ社員(酒主 義久アナウンサー)の言葉です。
傷つけたのはあなたの会社と社員、他人の不祥事は徹底的に叩くけど自分たちは別ですか
— ゆるゆるジケン~ご近所できごと速報~ 相互フォロー100% (@V03OoqHtvK04J2j) January 21, 2025
フジテレビ現役アナ号泣「大好きな会社が侮辱されて、大好きな仲間が傷ついている」https://t.co/rxyrJ1Y4F0#フジテレビ #上納システム #中居正広
13年働いてきて1度も辞めたいって思ったことないですし、大好きな会社で先輩も後輩も含めて、大好きな仲間がいろいろ苦しんでいる姿っていうのを見てきたので。好きな会社をもっとよくするためにも、調査であったりとか、説明も今後しっかりしてほしいなっていうのが今の思いです
と時折涙をみせながら話しました。その間に被害女性に配慮するような言葉は出てきませんでした。
仲間が苦しんでいる姿を目の当たりにして初めて会社のコンプライアンスの低さや実態を現実に知ることになった、ということが否めません。フジテレビの男性社員間と、女子社員では働きやすさ、働きづらさは異なっていたのかもしれれない、と垣間見るシーンでもありました。
高い給与と待遇
キー局って給料が鬼高いから「経営と争議だー」という雰囲気にならないんですよねーよねー。
— Shu Ubukata (@ubu369) January 23, 2025
スポンサーが離れて初めてこうなるという。
フジテレビ社員 悲痛な思い 労組80人→500人 1週間で急増 意見書を港浩一社長宛てに提出(スポニチ) | 毎日新聞 https://t.co/gdGbnGIrjs
フジテレビの社員は他のサラリーマンに比べて高い給与を受け取っており、労働組合に加入する必要性を感じていなかった可能性があります。
毎年、「春闘」というものが世間ではあり、勤務先のさらなる賃金や勤務・福利厚生の向上を目指すものですが、この組合員の数でフジテレビはその時期どうしていたのでしょう。
実質、会社側と話し合いを持とう!というモチベーションが上がらないくらい満足度が高かった、と思われても仕方ない。
労働組合の真価が発揮されるのは、今回のフジテレビの状況のように、良い時ではなく窮地に陥った時です。普段の景気の良い時の社風に隠されていたガバナンスやコンプライアンスの低さを今、まさに実感しているのは社員自身であることは間違いありません。
一般企業に比べると仕事柄、定時で帰ることが出来ない部署も多いため、労働環境をよりよくする意味合いでも本来なら組合が強い、もしくは組合が機能しているべき会社のはずです。
縁故入社や有名人子息の入社が多い
縁故入社や有名人子息の入社が多いことも、労働組合加入率の低さに影響を与えている可能性があります。スポンサー企業の子息・子女や親類が多い。国会議員の2世も他局に比べ目立ちます。
採用がある場合、企業の重役や取引先企業の家族や親戚を特別に採用することが多いものですが、フジテレビはその業界ゆえ関わりのある視聴率等に貢献のあった有名人の子息が入社している姿を目にしたり、耳にしたりの機会が視聴者にもあり、その形態に違和感を感じないほどに恒常化しています。
企業の重役や取引先企業の身内がいる場合、世間的に恵まれている環境におかれているため、あえて労働組合に入り新たに環境を変えようとする必要がなく社風にも会社を変えよう!という雰囲気が薄い職場である可能性が高いです。
このような環境で育ってきた人の割合が多いと組合活動への興味や参加は一般の人より低そうです。
フジテレビに入社している著名人や政治家の身内の一部です。
著名人/政治家 | 息子/娘 | 備考 |
---|---|---|
石破茂 | 次女 | フジテレビに入社したとの噂があります |
安倍晋三 | 甥※現在は衆院議員 | 2014年にフジテレビに入社 |
中曽根康弘元首相 | 孫 | フジテレビに入社 |
中川昭一元財務相 | 娘 | フジテレビに入社 |
高橋英樹 | 娘(高橋真麻)※現在フリー | アナウンサーとして入社 |
生田斗真 | 弟(生田竜聖) | アナウンサーとして入社 |
藤井フミヤ | 息子(藤井弘輝) | アナウンサーとして入社 |
陣内孝則 | 息子 | フジテレビに入社 |
遠藤周作 | 長男(遠藤龍之介) | フジテレビ専務取締役 |
アナウンサー職など、縁故というだけでは務まらない技術が必要な専門的な部門に入社している人がいるのも事実です。人の目がある分努力が求められる場合も。
フジテレビに限った話ではありません。
著名人/政治家 | 息子/娘 |
小渕恵三元首相 | 次女:小渕優子元経産相は元TBS |
石原慎太郎元都知事 | 長男:石原伸晃元幹事長は元日本テレビ政治部記者 |
労働組合に加入すると出世できない
労働組合の活動に熱心な場合、出世が出来ないという風土がある企業が世の中にあるのも事実です。フジテレビもこの風土を持つ会社の一つだった可能性があります。
フジ社員は「労組に入ると閑職に追いやられると言われています。そんな話を聞いたら、若手は誰も入らなくなりますよ」と明かす。
引用元:東スポWEB
「楽しくなければテレビじゃない」というテーマを掲げてフジテレビの快進撃が始まったのは日枝さんの時代といわれています。イケイケの社内で、会社の首脳陣に向けて拳をあげて福利厚生や賃金値上げ、オフィスではなく現場の過酷な労働環境を訴える労働組合は「格好悪い」「高給取り好待遇の自社には関係ないもの」という慢心がいきわたっていた名残が垣間見えます。
被害者の中居正広さんとのトラブル問題も社長が把握してコンプライアンス室が承知していなかったというねじれ構造も組合活動が浸透していない構造の現れです。窮地に陥ってから組合員数が急増する浅はかさこそ格好悪い姿に世間から見えているのは自覚があるのかは疑問です。
日枝久氏も組合活動に若かりし頃は熱心だったのになぜ?
「おそらく自分が労組をやっていたから、労組が力を付けると厄介な存在になると分かっているからじゃないですか?」(前出社員)
引用元:東スポWEB
同僚に理解されない組合活動を熱心に行っていた日枝氏だからこその現状であることは想像できます。
一般企業とフジテレビ 労働組合加入率の違い
現在は加入数が500人を超えるということですが、中居正広さんの女性問題トラブルにフジテレビが関わる前の労働組合の人数はわずか80人ということでした。
テレビ局 | 労働組合加入率 |
---|---|
フジテレビ | 約6%(1300人中80人) |
大手企業の労働組合加入率としては少なすぎる印象
従業員数が異なりますが、世間では名をはせている大手企業の人数と組合加入率は下記のようなものです。
一般企業の大手で労働組合員の割合がはっきりわかる情報をいくつか見つけました。以下の表にまとめましたので、ご参考ください。
企業名 | 労働組合員数 | 労働組合員割合 |
---|---|---|
トヨタ自動車 | 約70,000人 | 約90% |
日立製作所 | 約30,000人 | 約80% |
パナソニック | 約50,000人 | 約85% |
NTT | 約100,000人 | 約95% |
パーセンテージの違い…
一般の社員が労働組合に加入するようになったのは、2018年頃からであり、それ以前は技術職が中心の組合でした。
2018年ころ、ってなにかきっかけになるできごとがあったの?
電通社員だった高橋まつりさんの自殺事件
2015年12月に発生した過労自殺事件です。高橋まつりさんは、電通に新入社員として入社し、インターネット広告を担当する部署に配属されました。しかし、長時間の過重労働が続き、精神的に追い詰められた結果、自殺に至りました。
には、試用期間後に正社員となった高橋さんは、10月以降の1カ月間で労基署認定分だけでも約105時間の時間外労働を行っていました。これは過労死ラインとされる80時間を大きく上回るものでした。
この事件は、電通だけでなく、日本社会全体に大きな衝撃を与え、労働環境の改善や過労死防止の重要性が再認識されるきっかけとなりました。
中居正広問題と労働組合加入者の急増
中居正広さんの女性トラブルを受けて、フジテレビの労働組合加入者が急増しました。
2025年1月20日にフジテレビ労働組合が社員向けに送ったメールには、社員やその家族の生活を脅かしかねない現状が記されており、組合としても手をこまねいていられないという危機感が表れていました。このメールを受けて、多くの社員が労働組合に加入し、先週木曜以前の倍近い人数となりました。
フジテレビの労働組合が1月20日に社員向けに送ったとされるメール
〈中居正広氏に関する問題の事実関係については、会見が開かれたもののクローズドな開催で未だ社員に対する説明が十分になされておらず、組合としても情報収集にあたっているものの、真偽不明のところが多分にあります。
一方で事実として、フジテレビで働く社員が、不安な思いを抱えて仕事にあたらざるを得ない現状があるということ。番組制作や営業活動など多方面で支障が出てきていること、社員やその家族の生活を脅かしかねないことが起きていると認識しています〉
〈今回の問題は内容が多岐にわたっており、単純に解決できるものではなく、いま社員に出来ることは、会社が少しでも良い方向に向かっていくために、役員や上層部による解決を待つのでは長期化は避けられないことから、社員からも会社に働きかけるべきだと考えます〉
〈社員が主体的に動かずして、社会にもう一度信頼してもらえるフジテレビに刷新されることは無いと思います。そのためにも、より多くの社員の皆様に組合にご参加いただき、会社と対等に向き合う組織として、会社により多様な意見や提案をしていけたらと考えます〉
〈フジテレビの労働組合について、決して強いという認識を持たれてはいないと思いますが、今回の問題を機に多くの社員が組合に加入し、先週木曜以前の倍近い人数となりました。それでも現在のフジテレビの状況を打破していくためには、まだまだ足りません〉
〈もしも会社に対して抗議したいことや、訴えたいことがある方がいて、組合が役に立てるのであれば是非、ご連絡ください。現在の状況の中で会社が、組合の求めに対応しないことは考えられないですし、この点でも組合組織が大きくなっていくことは意味があると考えます〉
〈フジテレビが社会からの信頼を回復し、社員一人一人が安心して働ける環境を目指すことに反対する社員はいないと信じています。皆様のお力を是非お貸しください〉
引用元:gooニュース
フジテレビのコンプライアンス室がこの中居正広さんの女性問題トラブルの件を知ったのは12月下旬、と言われています。経営陣がトラブル直後に把握をしていてコンプライアンス室担当が知らない、という状況はむしろ本当は逆です。
このことも、労働組合が弱小であったことを露呈する一因です。
労働者の権利保護: 労働組合が強い企業では、労働者の権利がしっかりと保護されるため、コンプライアンス対策が充実しやすいです。
リスク管理の強化: 労働組合が強い企業では、リスク管理が強化される傾向があります。
従業員の意識向上: 労働組合が強い企業では、従業員のコンプライアンス意識が高まりやすいです。
遅きに失する、ということはありません。これからフジテレビの社内の透明性の向上で経営陣との対話を行い、情報の開示を求めることが恒常化していくことが望まれます。
実際、現在は500人以上に加入者数が急増しているフジテレビの労働組合は港浩一社長らが出席する会見を開き、経営体制の刷新を表明するよう求める意見書を提出しました。
今後の展望
フジテレビの労働組合加入者急増は、社員たちの意識の変化を示しています。中には勤続年数が長くても会社の存続にかかわる機会に初めて直面した社員も多いと思われます。会社の未曾有のピンチを受け、社員たちは会社が生まれ変わる一歩を踏み出すべきだと感じています。今後、労働組合の活動がどのように展開されるか、そしてフジテレビがどのように対応するかが注目されます。