卒業式で着物は恥ずかしい?非常識?母親のやりすぎ感がでない着こなし術

暮らし

春を迎えれば、卒業、入学シーズン。子供が出席する晴れの日に母親はどのような格好でその場に向かえばいいのか、迷いがち。スーツでなく和装の予定ならなおさら。

この記事は20代で一級着物講師と二級師範までは取得した筆者が、卒業式で着物は恥ずかしい?非常識なもの?という声と母親のやりすぎ感がでないスマートな着こなし術についてまとめます。

卒業式に着物で出席は恥ずかしい?非常識?な声を調査

卒業式に着物で出席することはスーツに比べむしろフォーマル感が増して捉えられるので恥ずかしいことでも非常識でもありません。

恥ずかしい と声が上がる訳

恥ずかしい?非常識?という意見について周りの声というよりも、下記の2つの捉え方が考えられます。
①着物を着用する本人の気持ち

②母親に対しての子供の意見

①例年の卒業式や入学式で見かける親の服装はスーツが圧倒的に多いものです。そんな中、着物で出席する本人に不安や迷いの気持ちがあるのも自然なことです。

まず、不安や迷いの中身を考えてみます

  1. 恥ずかしいと感じる:日常生活は洋服です。日本の伝統でもある着物を常日頃着用している人はそういません。非日常なことをすることに対して目立つことや注目されることを避けたいと感じる恥ずかしさ。
  2. 非常識ではないかと不安:周りの保護者がおおむねフォーマルスーツの中で、唯一もしくは少数派として着物を選ぶ場合、周りと調和せず自分が浮いてしまうのではないか、という心配からの不安。
  3. 着付けや着物の選び方に不安:着物は正しい着付けが必要であり、知れば知るほど【品】や【格】等しきたりやマナーとしての装いがあります。着物の種類から適切な色・柄や帯との合わせ方など選択や知識も軽視出来ません。これに自信がない人は、着物を着ることにためらいを感じるかもしれません。

②に関しては子供の感覚や目線から見て子供の晴れ舞台に親が目立つ服装で来るのは恥ずかしい、というもののようです。SNSでこのような若者の質問もあります。

私が子供の頃卒業式によく着物を着て来る母親がよく居たのですが何故でしょう?子供の晴れ舞台に何故母親が目立つ服装で来るのでしょうか?

引用元:ヤフー知恵袋2023.2.17投稿より

親世代からするとTPOに合わせた姿でも、今どき年始でも着物を着ない世代からすると親の着物姿は「礼を尽くしている」としてより「目立つ」服装と映り、同級生への照れもあり思春期の気持ちとして恥ずかしい、のでしょう。

卒業式や入学式を迎える日までその誤解が解けるよう、セレモニーに日本人が着物で出席することは主催者側にも主役の学生へも敬っているからこそ、という話が出来て上手く伝わるとよいことですね。

恥ずかしさの原因や非常識ではないか?の不安を取り除く

心配事や不安を取り除けば我が子のセレモニーが待ち遠しくなります!

  1. 特別な日であることを自覚する:「着物を装う」非日常なことをすることに対して目立つことを避けたいと感じる恥ずかしさも、我が子の卒業というセレモニーそのものが特別で非日常であることに気づく必要があります。洋服でなくてもよい十分な理由です。

  2. 少数派の着物の存在は貴重:会場にあふれる洋装と完全に少数派の着物では調和せず自分が浮いてしまうのではないか、とイメージしがちです。

    昔も今も、そして国際社会の場に至ってはなおさら、フォーマルになる程に着物で出席する機会が増えます。実はその場の「格」をあげる雰囲気を持っています。主催者や周りにとってはかえって喜ばしいことです。堂々と向かいましょう!
  3. 着付けの基本を押さえて装いに自信:レンタルで揃える場合にはすでに格や色合わせなど基本をクリアしたセットになっているはずなので心配はいりません。自分で揃えている場合でも新調なら購入先でまずアテンドしてくれる店員さんがいるはずなので相談できます。先輩ママにどんなことに気を付けたか、どんな色組み合わせにしたか、伺うとイメージが出て不安を払拭できます。

下見をしておくのも不安の解消ポイント

卒業式は学校行事でいつも訪れている場所。様子がわかれば下見の必要もありませんが、会場が異なる場合、普段と立ちふるまいが違う着物において当日あわてないよう事前にチェックしておくと不安の解消に一役買います。ポイントは以下の通りです。

お手洗いの場所や広さ・種類…いざという時にささっとお直しが出来そうな個室があるかどうか。多目的用の設備があるとより安心ですね。いくつかお手洗いの場所は施設に設置してありますが広めの箇所はあらかじめ見つけておきましょう。
会場の場所周辺や場内の階段…着物の移動は格段に足さばきが異なります。いつもは何気なく上り下りする階段も歩幅が違うので勝手が違います。裾を持って昇降も出来ませんので段差が大きい場合はエレベーターや迂回するルートがあるかもチェックしておくと便利です。

着物の世界でいう『格』って何?

着物の世界では、「」とは着物を着る際の約束ごとやマナーを指します。

レンタルなどの一過性で着物を利用する場合はあまり深く知ることはないのですが、新調したり結婚して着物を着る機会が増え、着物のことを知るようになるとよく耳にするのが『格』という言葉です。

フォーマルかそうでないかはこの『格』に左右されます。着物や帯だけでも『格』があり、着物と帯の組み合わせでも『格』が変わる、ちょっとおもしろい世界です。

この『格』を使いこなせるようになると改まった場で思いがけず恥ずかしい思いや非常識だった、とがっかりすることもなく楽しめるようになります。

着物の『格』を知っておくと安心

和装にも洋服と同じように、着物から帯、小物まで「格」があります。

着物の基本となるは大きく以下の4つに分けられます。

  1. 第一礼装(最礼装):
    • 公式な儀式や結婚式、お葬式などの特別な場で着用される着物です。
    • 例えば、以下の種類が含まれます:
      • 打掛(うちかけ):白無垢や色打掛など。挙式の際に角隠しや綿帽子をかぶります。
      • 黒留袖(くろとめそで):ミセスの女性が着る最も格が高い着物で、結婚式や披露宴で親族が着用します。
  2. 略式礼装(準礼装):
    • 冠婚葬祭に使える装いで、第一礼装よりもカジュアルな着物です。
  3. 外出着:
    • 街着や外出時に着用する着物で、普段着としても適しています。
  4. 普段着:
    • 家庭着や日常的な着物です。

この言葉を知っておくと着物や帯の説明がわかりやすくなります。

フォーマルな場にふさわしいのは?着物と帯の種類

レンタルでも新調でも着物の種類を知っておくことで、選び方に自信がつきます。装いにも違いがあり、常識ある着こなし方がわかるので恥ずかしい思いや非常識ではないか、という心配をしなくて済みます。

着物の種類

留袖ミセスの第一礼装主に結婚式のみに着用
色留袖同上名前の通り黒以外の色を使用した留袖。一ツ紋か三ツ紋があると利用範囲が広まります。結婚式および各種祝典にも対応。
本振り袖第一礼装(未婚)現在は袖の長さとだいたいにおいて大胆で豪奢な模様を生かして花嫁のお色直しなどで用いられます。
中振り袖第一礼装(未婚)本振り袖より袖丈が10~20cm短め。成人式用として主に着用されます。
訪問着未婚・既婚問わず共に準礼装柄もいろいろあり格調高いものが多く、結婚式や祝典などにも用途がたくさん。高価なので長く着られる色や柄を選び礼装用として一枚揃えておくべき着物です。
付け下げ礼装から略礼装まで未婚・既婚を問わず帯によって礼装から略礼装まで対応できます。
付け下げ小紋帯次第で略礼装まで上記と同じく格調高い帯と合わせると略礼装まで対応できます。
色無地紋付であれば略礼装まで一ツ紋と帯次第で礼装から略礼装まで用途がかなり広くなる着物。訪問着では改まりすぎる…という場合におすすめです。
小紋柄によって格が変わる友禅/辻ヶ花/江戸小紋/小紋とあります。
友禅…色彩的で精巧な染模様。日本の染め物の代表格。格のある帯で略礼装として披露宴などにも。
辻ヶ花…絞り染めと描絵を主とした優美な染物。振袖や訪問着などいろいろ使われている柄で格調高い柄。帯次第で結婚式まで対応。
江戸小紋…小さい文様を布地いっぱいに型染めしたもので最も古典的な小紋。一つ紋を入れれば格が上がり略礼装まで。
小紋…一般的な全体柄。
普段着もしくはおしゃれ用大変高価な品もありますが、マナーとしては結婚式や祝典には向かない着物です。種類は結城紬/大島紬の2種類があります。

訪問着が一枚あると便利ですね!

帯の種類

帯も実はたくさん種類はありますが、おもに卒業式や入学式などフォーマルな場面で適切に着用できる帯は下記のとおりです。

帯名用途説明
丸帯礼装幅が広く、豪華な帯です。織り上げたままでは着用できないため、半分に折って仕立てられます。振袖に使用されることが一般的です。
袋帯礼装丸帯を簡略化し、軽量化した帯です。結婚式や披露宴、パーティなどのフォーマルなシーンで着用され、振袖、留袖、訪問着、付け下げ、色無地などに合わせられます。金銀糸の入らない「しゃれ袋帯」は小紋や紬にも適しています。
名古屋帯略礼装カジュアルなシーンで活躍する帯で、色無地、小紋、紬の着物に合わせることが多いです。軽くて短いため、気軽に使いやすい帯です。

袋帯を準備しておくと間違いありません!袋帯にも種類がありますから気を付けましょう。

持っておくと安心な袋帯の種類

袋帯は、黒留袖や色留袖、訪問着などの第一礼装から、小紋や紬などのカジュアルな着物まで幅広く活用できる帯です。着物に合わせ金糸銀糸が多め、控えめで選ぶと判断しやすいかもしれません。

帯名用途説明
金糸銀糸が多い袋帯礼装金糸銀糸を豊富に使った豪華な袋帯です。礼装や準礼装の場で使用されます。
金糸銀糸が控えめの袋帯色無地、紬、小紋、付け下げなど洒落袋帯は金糸銀糸を控えめに使用した袋帯で、カジュアルなシーンでも着用できます。色無地や紬、小紋などに合わせられます。
お太鼓結び専用の柄の袋帯小紋や紬お太鼓結びをした際に、お太鼓部分にのみ柄や模様が入っている袋帯です。気軽なおしゃれ着として楽しむことができます。

着物と帯の合わせ方やルールはあるの?

普段の街歩きやお出かけの場合と違って、卒業式や入学式などフォーマルな場所に出向く時には着物と帯の組み合わせは重要で、格や色のバランスを考慮することが大切です。

  1. 同系色でまとめる:
    • 着物が若草色ならば帯は濃い目の緑を選ぶ、など同色系でまとめると知的で落ち着いた印象になります。
  2. 反対色でこなれ感を演出:
    • 青系の着物に黄色系の帯など、反対色を使うと個性的で粋な装いになります。
  3. 着物の柄の一色使い:
    • 小紋のような全体に柄が入り、いろんな色が混ざっている着物を着る際に、柄の中から一色を選んで帯を合わせるとなじみの良い自然なセンス良い印象になります。

着物と帯の組み合わせは、個性やセンスを発揮できる部分でもあり、選ぶのが難しいと言えます。

ここはなるべく目立たない装いが安心なら、同系色のコーディネートがおすすめです。TPOに合わせて楽しめるようになるといいですね。

卒業式や入学式におすすめの着物

卒業式や入学式では、お子様が主役の場であることを第一に考え、控えめで落ち着いた印象のものを選びましょう。また柄は、一例として吉祥文様が用いられている着物も縁起が良く、お祝いの席にふさわしいといわれます。

卒業式や入学式にふさわしい着物を選ぶ際、以下の種類がおすすめです。

  1. 訪問着(ほうもんぎ):
    • 着物全体に華やかな柄が一枚の絵のようにつながるのが特徴的な着物です。黒留袖や色留袖に次ぐ礼装の着物です。入学式や卒業式以外にも結婚式やお茶会、パーティーなどでも着用できます。
  2. 付下げ訪問着(つけさげほうもんぎ):
    • 訪問着に次ぐ格の高さがあます。なので略礼装としてフォーマルにふさわしい着物です。控えめで品のある美しさがあり、主役を引き立てる雰囲気があります。
  3. 色無地(いろむじ):
    • 白生地を染め上げた無地の着物で、紋を入れることで格が上がります。最近では紋を入れない方も多いです。袋帯を合わせてフォーマルな場に、名古屋帯を合わせてお稽古やお食事会などにも着用出来ます。

着物の長所と短所

年齢を重ねていくほどに着物を着る機会は増えます。家庭を持ち子供が出来るとなおさらです。着物の長所と短所を知ると、実は着物が長期にわたって使える便利なものであることがわかります。

着物の長所着物の短所
長期間着用できる着るのに時間がかかる
デザインが変わらない活動的でない
体型の変化に対応しやすい手入れに費用がかかる

着物は日本の伝統的な衣装です。その美しさと独自の文化的背景が魅力で着物そのものが代々家族に伝わっていける貴重な品でもあります。一方で、洋服と比較すると、着る際の手間や制約がある、ということもあります。が、これは経験や学びで習得していくと時間がかかる点は短縮していけます。

卒業式に恥ずかしくない髪型

着物の準備が出来ても当日まであれこれ悩むのが髪型です。普段着慣れない和装なので戸惑いますが、若々しく見えてキレイに映える髪型で出席したいものです。子供が主役の式なので派手過ぎず上品に見えるスタイルにセット出来たら嬉しいですね。

普段とは違う髪型にときめく気持ちは母親でも女性として楽しみましょう。SNSでも楽しみにしている声が聞かれます。

若いママ 上品で落ち着いて見えるヘアスタイル

上品で落ち着いた装いに見えるヘアスタイルの特徴はシニヨンを低めに置くことです。若いママでもいつもと違った自分の雰囲気を感じることが出来る髪型です。

若いからこそ大丈夫な髪型が「ゆるふわ」です。適度なふわっと感は柔らかい印象を与えてくれます。右側はもともと長めのボブです。サイドをねじり編みにして襟足の毛を隠しています。ロングのようにまとまって見えるのが素敵です。ロングではなくても和装に似合う髪型は可能です。

まとめ

卒業式で着物は恥ずかしい?非常識?とおもうことは着物の世界の入り口に立てた、ということであることがわかります。知ることや着てみることで経験値となり、恥ずかしくもなく母親のやりすぎ感も感じない、ナチュラルで上品な姿で子供の晴れの日に参加することが出来るようになります。基本を守る着こなし術で非常識を感じさせない素敵な母親の着物姿を披露出来たら次の機会も着てみたい!と楽しみになりそうです。

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